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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)841号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原告は、本件特許発明につき特許出願をすると間もなく本件特許発明の製造方法を使用して即席ハンバーグを製造し、これを販売しはじめた。

被告は、鯨肉ベーコンの製造販売等を業としていたが、昭和三八年暮頃原告の従業員であつた訴外K、同Iから原告の行つている即席ハンバーグの製造法を聞き出しこれを参考にして即席ハンバーグの製造に着手し、昭和三九年初頃から本格的に即席ハンバーグの製造販売に乗り出した。

そして、被告は、本件特許出願につき出願公告のあつた昭和三九年一二月一日から昭和四〇年七月末日までの間、次の方法で即席ハンバーグを製造し、これを販売した。

(1) マトン、豚脂、ベーコン、鯨肉、魚肉および玉葱にパン粉、卵白、粘着剤等を加えて混和し、香料および調味料によつて調味してハンバーグの原料を作り、これを一個八五瓦ないし九〇瓦の小判型に型取りすること、

(2) これを数十個網籠に入れたうえ、釜に入れてガスバーナーで摂氏一〇〇度に近い温度まで加熱上昇させてあるラード中に適当時間浸漬して加熱殺菌すること、

(3) これを釜から引上げ扇風機で風冷した後、缶に入れ加熱して熔融状態にしてあるヘッド中に手などで瞬間的に浸漬して表面に固形状態のヘッドの皮膜を形成すること、

被告本人尋問の結果のうち以上の認定に反する部分は信用し難く、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。

三、前項に認定した被告の即席ハンバーグ製造法(以下「被告製造法」という。)と本件特許発明の構成要件とを対比すると、被告製造法は、ハンバーグの原料として本件特許発明にいう澱粉質を使用しているか否かの点をしばらくおけば、本件特許発明の構成要件をそのまま具備していることが明らかである。

そこで、被告製造法がハンバーグの原料として本件特許発明にいう澱粉質を使用するものであるか否かについて考えてみると、被告製造法においてハンバーグの原料としてパン粉を使用することは、さきに認定したとおりであり、これが小麦粉の加工品として澱粉質を含有することは否定すべくもない。被告は、本件特許発明にいう澱粉質とは糊料としての澱粉質を指すものであつて、パン粉のように増量剤として使用されるような澱粉質を指すものではない旨主張する。しかしながら、成立に争いのない甲第二号証により認め得る本件特許発明の願書に添附した明細書の発明の詳細な説明欄の記載によつても、本件特許発明にいう澱粉質が被告主張のような唯一特定の効用を有するものに限定されるとはとうてい認め難い。かえつて、同欄における原料に関する記載からみると、本件特許発明にいう澱粉質とは、その用途の如何を特に問うことなく、通常ハンバーグの製造に当り原料として用いられているような澱粉質を指すにすぎないものであることが容易に推認できるのである。そうすると、パン粉もハンバーグの製造に当り通常原料として用いられることは本件口頭弁論の全趣旨から明らかであるから、その使用の目的は特に問うまでもなく、それが本件特許発明にいう澱粉質に該当することもまた明らかである。

してみると、被告製造法は、本件特許発明の構成要件をすべて充足し、ひいては、その作用効果をも具備するものと推認されるから、本件特許発明の技術的範囲に属するものといわなければならない。

四、被告が、その即席ハンバーグの製造販売に当り、本件特許発明の実施として原告が採用していた即席ハンバーグの製造法を探り出してこれを参考にしたことは既に認定したとおりである。そして、<証拠>を総合すれば、原告は、昭和三八年暮頃被告においてハンバーグの製造販売に乗り出そうとしていた際、被告を料亭六芳園に招き、原告において採用している即席ハンバーグの製造法は目下特許出願中であるから、これと同一類似の方法を使用する即席ハンバーグの製造は遠慮してもらいたい旨申し入れたことが認められる。

被告は、その際原告が被告に対して本件特許発明に基づいて損害賠償等の請求をしない旨確約したと抗争するけれども、この点に関する被告本人の供述は信用し難く、他にこの主張事実を認定するに足りる証拠はない。

以上の事実によりすれば、被告は、本件特許出願につき出願公告のあつた昭和三九年一二月一日以降被告製造法が本件特許発明の技術的範囲に属することを知りながらこれを使用して即席ハンバーグを製造のうえ販売し、故意に本件特許権ないしその仮保護の権利を侵害したものであるといつて差支えない。したがつて、被告は、これにより原告の被つた損害を賠償すべき義務がある。

五、本件口頭弁論の全趣旨によれば、被告が昭和三九年一二月一日から昭和四〇年七月末日までの間被告製造法により製造して販売した即席ハンバーグの売上高は、昭和三九年一二月金一五〇万円、昭和四〇年一月金一四五万円、同年二月金一〇五万円、同年三月金一五五万円、同年四月金一一〇万円、同年五月金一三〇万円、同年六月金三〇万円、同年七月金七五万円、合計金九〇〇万円であると認められる、<中略>

次に、<証拠>によれば、原告は、昭和三九年九月一日から昭和四〇年八月三一日までの間即席ハンバーグの製造販売により売上高の六パーセントに相当する純利益を挙げたことが認められる。そうすると、他に特段の事情の認められない本件においては、被告もまた被告製造法による即席ハンバーグの製造販売により少くともこれと同程度の純利益を挙げたと推認することができる。

してみれば、被告は、昭和三九年一二月一日から昭和四〇年七月末日までの間被告製造法による即席ハンバーグの製造販売により合計金五四万円の純利益を挙げたことになり、この利益の額が被告の本件特許権ないしその仮保護の権利の侵害により原告の被つた損害ということになる。(古関敏正 吉井参也 小酒礼)

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